本日この場に臨んでくれている57名の皆さん、一人もこぼれることなくよくぞここまで努力を重ね、踏ん張り、修了の日を迎えてくれた、まずはそのことを喜ぶとともに、心からその努力に敬意を表します。皆さんは飽くなき努力の人でした。

 出雲高校以外の高校から入科した皆さん、未知、未経験の環境の中で、当初は戸惑いもあったでしょうが、すぐに適応し、縁あって集った同志・仲間たちとともに、切磋琢磨して高め合ってくれました。その努力の姿勢は期待以上であり、今や本校卒業生との区別もつかないほどです。母校の先生方にも胸を張って出雲高校補習科の修了を報告してください。さぞかし喜ばれることでしょう。

 さて、皆さん、補習科での生活はいかがだったでしょうか。もちろん、辛さ、苦しさもあったでしょうが、それにもまして楽しく充実した実感も多く得られたのではないかと思います。それは何に起因するか。蓋し、自らの「今年こそはリベンジしてみせる」との強い意志と、どんな時も目標を共有できる同志たち、そして支えてくださる先生や家族の存在があったからではないかと思います。高校時代と違い、「大学合格」という具体的かつ限定的な目標に向かって努力した日々は、必ずや人生の太い年輪として刻みつけられたことでしょう。私自身、平成17年度に本校の補習科主任・担任を務めましたが、その当時の生徒達や自分自身の交流経験も含めて思い返すと、こうした年輪を刻んだ人は、同年代の人に比べ「強烈な大人」になっている場合が多いと思います。努力の価値を知り、我慢を経験し、他者への感謝の念を持つ、そして自分で将来を切り拓いたとの自負と自信を持っている、そうした強みは、これからの人生にとって揺るぎない財産となるはずです。キャリア教育でいうところのキャリアとは、車道の「轍」が原義ですが、敷かれたレールを歩むに過ぎなかった高校時代とは比べものにならないほど、皆さんの歩んだ1年は幅広く深い轍となっていることに気づくでしょう。自分から苦難を承知で選び、突き進んだこの一年の轍、未来に向かってしっかりとつながっていくはずです。

 今日現在、真の目標達成が叶った人はほぼいないと思われます。朗報が届くのをただ待つだけではなく、まだ可能なチャレンジを続ける人ばかりではないかと思います。今日をもって補習科は修了となりますが、私達はまだまだ皆さんのチャレンジを支援し続けます。最後の最後まで諦めず、飽くなき努力を続け、「合格通知」という朗報をもって喜び合う日の到来を待ちましょう。

 ここ出雲高校5号館は、皆さんにとってきっと心安まる場所、いわゆる「ホーム」であったのではないかと思います。昇降口のホワイトボードや階段踊り場のブラックボード、掲示板、GRITizm NOTEなどを通してコミュニケーションを重ねたり、授業中心に自分の足跡を確かに刻んだりした日々が懐かしく思い出されることでしょう。これから大学に入学した後、いつでも里帰りしてもらってかまいません。担任の勝部寛明先生、田中眞之先生、事務の寺本さん、そして授業担当の先生方、皆さんがきっと温かく迎えてくださると思います。なんといってもここ補習科は、アットホームな空気感に満ちあふれていますから。

 結びに、担任の先生方をはじめ、補習科生に関わってくださった全ての先生方に、ここまで導いてくださったことに心から感謝するとともに深く敬意を表し、そして補習科生達の未来が幸多かれと願い、補習科修了にあたっての祝いの言葉とします。修了、おめでとうございました。

令和5年2月28日 島根県立出雲高等学校 校長 多々納雄二

 

 

令和4年度 出雲高校補習科 修了式  お祝いの言葉