伝えたい思いを言葉に載せて
~意義を知り、至誠を貫こう!出雲が出雲であるために~

 

 3学期終業の日を迎えました。令和4年度を締めくくる日でもあります。思うに、1年生は歴史的改訂と言われる新学習指導要領に基づいた教育を受けた第1期生であり、個人端末を購入して入学した初めての生徒でした。2年生は、学習指導要領改訂前の最終世代であり、卒業生は、高校3年間のほぼ全てがコロナの影響を受けた歴史的年代と言えます。変化の激しい時代にあって、まさに激動を体現したような皆さんです。マスクを外した素顔を見ることも少なく、体育館での全校集会も開けず、異学年交流も部活動以外では困難な学校生活で、その成長を大いに心配したものの、ICTを活用したオンラインでの会合や学習活動がもはや自然・当然となり、協働的な課題研究等にもスムースに取り組む皆さんの姿を見ていると、逞しさすら感じ、胸をなで下ろしています。大学入試改革を含めた変動・変革期の、更にコロナ禍も重なった時勢にあっても、我らが出雲高校生は前進、進化し続けている、胸を張って誇ろうではありませんか。3年もの長きにわたって続くコロナ禍をしっかりと乗り越えた皆さんを大いに讃えたいと思います。

 今日は、三つの「言の葉」をもって1年を振り返り、次年度に向けての提案をする機会にしたいと考えます。問いを投げかけてもみたいと思います。静かにただ聴くのではなく、周囲との対話があってかまいません。課題研究等でも重要視される所謂「当事者意識」をもって聴き受け止め、考えてみてください。

 

1)久徴の伝統精神「至誠」 (問い)「至誠」が説明できますか?

 この上ない誠実さを息むこと無く持ち続ければ、必ずや意味ある「徴(しるし)」が顕れる。創立以来百年を超える歴史と伝統をもって継承されてきた基本精神です。他者や事柄に対してはもちろん、自分自身にも誠実に向き合うことで成果は顕在化し、未来は確かに拓かれていく。何事にも対処する時毎に、それが「至誠」に基づいているかを事前に判断し、事後に「至誠」であったかを省みる。その個々の繰り返しが出雲高校生の進化や伝統継承の決め手になります。偽りなき誠実さを貫く、何よりも大切にしたい。今年度から新学習指導要領が年次進行で実施され、新2年生のみならず新入生も端末を所有し、新しい教育が本格化します。ICTを活用した教育も更に進めていくことになります。時流は変化しますが、変わらずに貫きたい姿勢(至誠)を見失わずに、互いに高め合っていきましょう。

 

2)アイ(愛・~合い)に満ちた、見続ける学校

 昨年度から2年間伝え続けたメッセージ。学び合い・励まし合い・支え合い・助け合い・高め合い等、仲間や他者と互いに結びつき協働することによって生み出される愛(友愛・師弟愛・家族愛・兄弟愛など)を「絆」と呼んだりします。とりわけ同じ環境で同じ志を持つ、いわゆる同志とつながり合うとき、「愛」はいっそう広がり深まっていく。高校は修練の場であるとともに共創の場です。

(問い)皆さん自身、どんなアイを心がけ、実践しましたか。あるいは、他者からのアイをどのように実感しましたか?

 教職員は、生徒の学びや育ちを指導・支援するため、時には厳しく時には温かく、見抜き、見立て、見守り、見続けるように努めました。また、生徒の多様性を踏まえ、共生社会の実現に向けてインクルーシブ教育の推進を図り、誰もが安心して学べる環境構築を心がけてきました。「困った生徒はいない、困っている生徒は少なからずいる」との認識のもと、多くの教職員の目で見続けてきたつもりです。

(問い)貴方の困り事は何ですか。私達教職員はきちんと皆さんの困り事に対応できたでしょうか?

 現在、戦争と呼ばれる状況が世界で起こっています。アイを大切に、互いを尊重し、見続ける姿勢を持って、平和で友好な関係や世界を築いていきたいと思います。まずはこの出雲高校そのものから。

 

3)学びのスタイル ~大切にしたい、スローガンに込められた意義~

 本校の課題研究等をはじめとする学びのスタイルにおいて、大切にしているスローガンがあります。(問い)校内至る所に掲示してあるポスター、記載されているスローガン三つは何ですか? 

 そうです、「自立・協働・挑戦」です。学びにおいて、他者依存ではなく、責任転嫁なく、主体性を発揮して自立してほしい。先に示した「当事者意識」もここに帰着します。また、一人ですることの限界、他者との共同作業の効果や価値等を考え、対話や協働に努めてほしい。そして、未経験や未到の領域に対して、また新しい価値の創造に向け、失敗を恐れずに挑戦の姿勢を貫いてほしい。こうした思いを込めたスローガンなのです。物事には大小はあれ意義や目的があります。スローガン等の言の葉はその象徴。何のための取組か、何を狙ったメッセージなのか。意義を慮って行動の指針とする。意義も意識せずにいては、何の達成も叶わない。例えば、授業の課題(宿題)や部活動の練習。何のための課題、練習なのかをわきまえず、与えられたことを鵜呑みにしてただこなすだけでどんな成果が期待できるでしょうか。 狙いとする、先にある学びの進化(深化)や技能の成熟を意識し、その取組に本気で挑んでほしいのです。それができてこそ、生徒の皆さんが伝統ある出雲高校生の一員たる証となり、本校が出雲の地にあって一層期待される高校たる裏付けとなるでしょう。出雲が出雲であるために、皆で挑んでいきましょう。

 

 結びに、この年度末の人事異動で多くの先生方が転出されます。ご退職の先生もいらっしゃいます。この後の離退任式において、異動される先生方のメッセージを受け、これまでの思い出を振り返りながら、別れを惜しんでください。生徒の皆さんと私達教職員を、常に温かく、時には厳しく、力強く支えていただいた皆様に、この場を借りて心からお礼をお伝えしたいと思います。ありがとうございました。

 以上、全ての生徒及び教職員の皆さんの、健康と更なる活躍を祈念して終業式の式辞とします。

令和5年3月24日 校長 多々納雄二

 

令和4年度3学期終業式 式辞